ダイヤモンド業界の不都合な真実と新たな取組 その2

(つづき)
 
前回はRapaport weekly report(2014年11月14日版)で紹介されたダイヤモンド業界にはびこる「水増し鑑定(Overgrading)」の前半部分をお届けしました。本日は、このレポートの後半部分になります。なお、原文は下記リンクになります。
 
Rapaport Weekly Report - Nov 14, 2014
 
 
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ラパポートはあやまった鑑定書が出回ることで「不公平な環境」が生まれ、やがてダイヤモンド産業自体を滅ぼす、と言っています。
 
非倫理的な「水増し鑑定」の状況が蔓延すると、まともなジュエラーも悪に引きずり込まれるというのです。実際、同じFカラーと鑑定されたEGLIが40万円でGIAが80万円を比べた場合、価格重視の消費者には安いほうが売りやすいようです。ダイヤモンドのグレードや鑑定機関の違いについて教育をするには時間もコストもかかり、お客様だって学ぶことより買い物の方がすきなのです。
 
また、この問題をあえてクリスマスシーズン前に提起した理由を述べています。
 
それは、消費者のことを考えるべきではないのか?ということです。自分の買ったダイヤモンドが後で過大評価されたものだと知ったときの悲しい気持ちを考えるべきではないのか?消費者がお金を失い業界が信頼を失うよりも、業界の売上や利益が失うほうがマシではないのか?と。熱い男ですね。
 
消費者は、自分の買ったダイヤモンドが水増しされた「偽のグレード」だと知ったらどうするでしょうか。「そうかグレードが低いから安かったのか。仕方ないな」と言うでしょうか。かつてYehudaダイヤモンドのように訴訟にはならないでしょうか。(訴訟をもってくるところがアメリカっぽいですね)。払い戻しを要求されたとき、いったい誰が払うのでしょうか。そして、そんなことが起こったときメディアによるダイヤモンド業界への攻撃は取り返しのつかないものとなると予想しています。
 
Rapaportは過大評価のダイヤモンドを扱っている小売店に警告します。水増し鑑定のダイヤモンドを販売するのなら、買い戻しとダイヤモンドビジネスからの撤退を覚悟せよと。
 
この後、さらにEGLの状況について細かく指摘し、またクラリティグレードの「SI3」というGIAにはない基準についても述べていますが、本稿の主旨ではないので詳細は省きます。ご興味のある方は原文を御覧ください。
 
レポートの最後で、Rapaportは問題の解決策として具体的なルールを検討しています。端的にいうと、「今までは買い手の責任であったものを売り手の責任とする」というものです。GIAの表記方法を用いながらGIAの基準と異なる「水増し鑑定(Overgrading)」されたダイヤモンドは、GIAで再鑑定を受け、鑑定結果が当初よりも2段階以上下がってしまうものは売り手が払い戻すというものです。
 
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さて、今回のRapaportの告発を見て、クリスマス、お正月、バレンタインデーとダイヤモンドのシーズンを迎えた日本ではどうなのでしょうか。
 
日本にはここで取り上げられているEGLIの鑑定書はほとんど見ることがなく、マーチン・ラパポートが懸念する状況に、直接的にはさらされていません。日本の主要な鑑定機関であるCGL(中央宝石研究所)などは非常に厳格な鑑定で知られています。安心してご購入いただけると思います。
 
しかし、「鑑定書」「鑑別書」「保証書」など一般の消費者にとっては区別のつかない用語は氾濫していますし、「CZダイヤモンド」「シミュラントダイヤモンド」のようにダイヤモンドではないものにダイヤモンドを冠する表記なども目立ちます。
 
また、日本の消費者はアメリカの消費者に比べてダイヤモンドに関する知識が少ないため、購入の際に売り手からの情報を鵜呑みにしてしまう傾向があるようです。
 
そのためには、消費者に対する更なる情報の開示はもちろんですが、業界全体として「水増し鑑定」のダイヤモンドを扱わない枠組みや、Rapaportが言うような払い戻しというルールなども検討していかなばならないでしょう。ダイヤモンドは資産性やコモディティ性があるにもかかわらず、取引規制がほとんどない稀有な商品です。業界による倫理的枠組みや自浄作用が働かなければ、やがて当局による規制の対象となるでしょう。
 
ダイヤモンドは他の一般的な商品と異なり、グレードによって資産価値を持ち、消耗することなく何代にもわたってその価値を継承していけるものです。ダイヤモンドは永遠であり、またダイヤモンドは永遠であると思われているからこそ、他の商品にもまして誠意を持って取り組んでゆかねばならないと思います。
 
 ※ダイヤモンド相場に関する質問は画面右下の「チャットコーナー」からお気軽にお寄せください。

 

【ダイヤモンド相場表】 [0.3カラット、0.4カラット、0.5カラット、0.6カラット、0.7カラット、0.8カラット、0.9カラット、1.0カラット]

【為替】

 USDJPY = 118.02 (三菱東京UFJ銀行 TTS 10:00現在)
 [http://www.bk.mufg.jp/gdocs/kinri/list_j/kinri/kawase.html]

【Israel Diamond Industry】

 IDEX Online Index = 131.79
 [http://www.israelidiamond.co.il/english/index.aspx]

【祝祭日/イベント】

 ● 11/1(土) 聖人の日(キリスト教の国々:イタリア・、フランス、ドイツ等)
 ● 11/3(月) 文化の日(日本)
 ● 11/3(月)~11/4(火) 国民統一の日(ロシア)
 ● 11/4(火) ムハッラム(インド)
 ● 11/11(火) ベテランの日(アメリカ)
 ● 11/19(水) 贖罪の日(ドイツ)
 ● 11/24(月) 勤労感謝の日(日本)
 ● 11/27(木) サンクスギビングデー(アメリカ)

 ◯ 11/3(月)~10/7(金):デビアス サイト(ダイヤモンド原石の販売)
 ◯ 11/7(金)~10/10(月):マレーシア国際ジュエリーフェスティバル 2014 (クアラルンプール)
 ◯ 11/14(金)~10/17(月):中国国際ゴールド・ジュエリー・宝石フェア(上海)

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