ダイヤモンド業界の不都合な真実と新たな取組

 ダイヤモンドの取引価格には「ラパポート価格」という基準があるのですが、それを発表しているのがRapaport社というダイヤモンドの総合情報会社です。まぁ、日経新聞が日経平均を出しているようなものですかね。なお、RapaportはRapNetというオンライン取引システムを提供するなど情報提供会社のワクをこえた業界のキープレーヤーです。
 
 そのラパポートが2014年11月14日(金)のウィークリーリポートでダイヤモンド業界に蔓延している「過大評価(Overgrading)」問題を告発しています。全8ページも費やしたこの告発は、ダイヤモンドの鑑定機関であるEGLIが実際のグレードよりも水増ししたグレードでレポートを発行し消費者を欺いている、とキツイ調子で書かれています。
 
Rapaport Weekly Report
 
 また、このレポートの内容はラパポートの創始者であるMartin Rapaportの発言動画という形でもアップされています。約20分間、「ここまで言っていいのか!?」というほど激しく吠えまくっています。Youtubeのコメントにも書かれていますが、いやぁ、「ロック」な御仁ですね。
 
Honest Grading Video From Martin Rapaport
http://youtu.be/xwPv8HjQ4DY
 
 
 なお、この話には前フリがありまして、Rapaportは今年9月にRapNetからEGL鑑定のダイヤモンドを除外すると発表していました。ダイヤモンドブースでも取り上げた話題です。
 
ダイヤモンドの鑑定がより統一の方向に進みそうです ~ラパポートがEGLの不掲載を決定~
 
 それに対してEGLIは2014年9月18日にRapaportの除外措置に対する反応としてプレスリリースをしています。
 
EGL International Reacts to RapNet Decision to Delist Grading Reports
 
 こういった流れから今回のレポートになったのですが、以下に今回のレポート内容を要約しつつ確認してまいります。
 
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 まず、このレポートは「ダイヤモンドのカラーグレードが、本当はNなのに、Gといって売ってもいいのか?」というショッキングな書き出しで始まります。鑑定機関の一つであるEGLIはグレードを過大評価しているというものです。
 
 これは業界でよく知られた事実です。ダイヤモンドディーラーもこのことを特に批判するでもなく、むしろ安いダイヤに高いグレードがつくことを容認しているふしがあります。それはEGLの安いGカラーの方が、GIAの高いGカラーよりも売りやすいからです。
 
 しかし、それはダイヤモンド業界が「嘘つき」で「詐欺師」の集団ということなんじゃないのか?とストレートに疑問をぶつけています。
 
では、こういった事態をEGLI側の主張を取り上げながら検討していくわけです。
 
 
1.ダイヤモンドの鑑定には「スタンダード」がない
 
 EGLIは前述のプレスリリースの中で、ダイヤモンドの鑑定は国際的な「スタンダード」がなく、各鑑定会社による「主観的なもの」だと言っています。
 
 これに対しラパポートは、そんな訳あるか、と反論するのです。4Cと呼ばれる鑑定方式とその際に使われる表記方法は1953年にGIA(Gemological Institute of America)によって開発されました。以来、何百万というダイヤモンドがこの基準で鑑定されてきたのです。これこそスタンダードである証拠でしょうと。
 
 また、もしスタンダードがないというなら、EGLIは自分たちのレポートの中で、なぜGIAの4Cを使っているのか、なぜカラーグレードの最上位をGIAの表記方法と同じく「D」からはじめているのか、なんで「A」からにしていないのかと。確かにその通りですよね。
 
 そして、ラパポートはこんな考え方を認めていたらダイヤモンドの価格なんて決められないし、業界が潰れるぞと警告しています。更に、こういった事態に対して業界のリーダーたちが公的に何の発言もしないことにショックだと嘆くのです。
 
2.ダイヤモンドの鑑定は「主観的」である
 
 ダイヤモンドの評価は主観的なものだという主張です。にんげんだもの。
 
 これに対してラパポートの反論はこうです。グレード判定の程度差はあるものの(人間だもの)、GカラーとJカラーを見せたら100人の鑑定士中100人が間違いなく見分ける。3段階も4段階も異なる鑑定結果(EGLIがやっている)にはならない。グレーディングというものは評価方法が定まっており、何段階も異なるわけがない。
 
3.EGLIという逃げ口上
 
 RapNetはRapaportが提供する会員制オークションサイトのようなものですが、ダイヤモンド価格を見ていると面白い傾向が分かるそうです。
 
 鑑定機関による鑑定書がついていないダイヤモンド(つまり売り手の独自の鑑定)とEGLIの鑑定書がついたダイヤモンドでは、同じグレードの場合、鑑定書なしのダイヤの方が高く値付けられているのです。
 
 つまり、RapNetの参加者は自分の責任においては嘘をつかず、正しいグレードで相応の価格をつけるということです。一方で、EGLIの鑑定書付きであれば、EGLIのダイヤモンドが本当はグレードが低いということを皆知っているため、良心の呵責を感じることなく低い価格を設定するということです。
 
4.安いかろう・・・
 
 サプライヤーの中には、価格が安ければ鑑定結果が歪められても構わないという意見があるそうです。安かろう悪かろうという話でしょうか。安いんだから消費者も納得してくれるという考え方でしょうか。
 
 もちろんそんなことはなく、1990年代には訳ありダイヤモンドを安売りしていたRick Chotinというセントルイスの小売店主が、顧客に必要な説明をしていなかった(「訳あり」なのはトリートメントのため)ことで払い戻しを請求され、1億円以上の負債を抱えて自殺したという話があります。
 
 「安いんだったらダイヤモンドのグレードが嘘でもいいです」なんていう顧客はいないのです。
 
5.販売店がちゃんと説明すればいい
 
 販売店が顧客に全て説明すれば問題ないという意見があります。EGLIは標準的なグレーディングの用語や記号を使っているけれどGIAの基準とは違いますよ、そのために安いんですよ、と。
 
 ラパポートはこの主張に疑問を呈します。仮に、全小売店がEGLIは鑑定結果が間違っている可能性がありますと顧客に伝えるとしても、それが正しいダイヤモンド販売店のすることでしょうか。EGLIがカラーGとしたダイヤモンドがあり、評価が誤っている可能性を伝えたところで、本当のグレードはわからないままです。
 
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 と、このように非常に厳しい追求や分析が進みます。これ以降は、この問題が招くであろう業界の行く末であり、解決策と提案となります。
 
 長くなりましたので、続きは次回に回します。

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【ダイヤモンド相場表】 [0.3カラット、0.4カラット、0.5カラット、0.6カラット、0.7カラット、0.8カラット、0.9カラット、1.0カラット]

【為替】

 USDJPY = 117.57 (三菱東京UFJ銀行 TTS 10:00現在)
 [http://www.bk.mufg.jp/gdocs/kinri/list_j/kinri/kawase.html]

【Israel Diamond Industry】

 IDEX Online Index = 131.54
 [http://www.israelidiamond.co.il/english/index.aspx]

【祝祭日/イベント】

 ● 11/1(土) 聖人の日(キリスト教の国々:イタリア・、フランス、ドイツ等)
 ● 11/3(月) 文化の日(日本)
 ● 11/3(月)~11/4(火) 国民統一の日(ロシア)
 ● 11/4(火) ムハッラム(インド)
 ● 11/11(火) ベテランの日(アメリカ)
 ● 11/19(水) 贖罪の日(ドイツ)
 ● 11/24(月) 勤労感謝の日(日本)
 ● 11/27(木) サンクスギビングデー(アメリカ)

 ◯ 11/3(月)~10/7(金):デビアス サイト(ダイヤモンド原石の販売)
 ◯ 11/7(金)~10/10(月):マレーシア国際ジュエリーフェスティバル 2014 (クアラルンプール)
 ◯ 11/14(金)~10/17(月):中国国際ゴールド・ジュエリー・宝石フェア(上海)

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