カットグレード

 カットグレードはダイヤモンドの輝きを表すグレードです。輝きに影響するダイヤモンドのプロポーションを測定し、理想的な値と比べて評価します。

 上から順番に、Excellent、Very Good、Good、Fair、Poorという5段階によって評価されます。また、カットグレードの評価項目の一つである「Polish:研磨具合」と「Symmetry:対称性」の評価をあわせて、3Excellentやトリプルエクセレントと呼んで最上級グレードとすることもあります。

 GIAのグレードにはないのですが、「ハート&キューピッド(H&C)」や、「ハートアンドアロー(H&A)」という表現もあります。これはダイヤモンドの対称性が特定の条件を備えたときにハートマークや矢印が見えるというものです。

 

カットグレードは面白い

 ダイヤモンドの評価はカラットやカラーが主流で最も注目されてきました。このところカットを重視するという考え方も出てきており、重要さは高まってきています。

 カットグレードの評価の方法は他のグレードに比べて複雑です。ダイヤモンドのありとあらゆる部分を測定し、それぞれの長さの比率や角度をひとつひとつ評価し、最後に全ての評価を総合してグレードを決定するという仕組みになっています。

 長さはExcellentだとか、角度はVery Goodだとか、テーブルの割合はGoodだとかが決まったら、カットグレードの総合評価は一番低いグレードに合わせることになっています。つまりこの場合は今のところどんなに良くてもGood止まりです。

 さらに、コンビネーションで決まる部分もあります。後で説明するテーブル%とクラウン角度とパビリオン角度のバランスを見るものです。3つがそれぞれがExcellentであったとしても、コンビネーションで見た時にVery Goodと判定されることもあるのです。

 Excellentカットとはそのような全ての項目でExcellentと判定され、一つとしてVeryGoodはなく、コンビネーションでもExcellentとなったものなのです。

カットグレードは奥深い

 カットは人の手によってなされたものです。カラーやクラリティが天然によって無慈悲に決まる一方、カットは人の意思によって選び取られ、人の技術によって作り上げられたものです。そのため、ダイヤモンド職人やダイヤモンド会社の思いや思惑や欲などが渾然一体となって表現されているのがカットグレードなのです。

 また、カットグレードとカラットは表裏一体の関係にあります。ダイヤモンドは直径から理想的なプロポーションが機械的に決まり、それによってカラットも決まります。例えば、1.0カラット3Excellentのダイヤモンドと1.2カラットGoodカットのダイヤモンドは本来的には同じであるのです。ところが、人の好みや業界のプロモーションによってこの2種類には価格差があり、その差を利用したビジネスがあるのですが、それは別のページでご説明します。

カットグレードの仕組み

それでは順番にカットグレードを決める一つ一つの項目を見て参りましょう。

1.ガードル直径 ~ 全ての基本

 ガードル直径とは、ダイヤモンドを真上から見た時に見える「円」の直径のことです。ダイヤモンドの見た目の大きさや光の量に影響をする最も重要な項目です。

 ガードル直径は原石の大きさによって決まってしまうので、小さくすることはできても大きくすることはできません。ダイヤモンドは、ガードル直径が決まれば理想的な重さ(カラット)が決まります。逆にガードル直径とカラットを比べることで「余分な重さ」が分かります。

 直径から理想的なカラット数は「(直径)×(直径)×(深さ)× 0.0061」 という式で出すことができます。下の表はそのように計算した時の理想的な重さを表しています。


2.デプス(Depth) ~ 深さは輝き、深さは値段

 デプスとはダイヤモンドの真上の平らな部分から、底の尖った部分までの長さのことです。 深さはダイヤモンドの明るさに影響するため適切な深さであるかどうかが評価されます。

 ダイヤの価格は「重さ=カラット」によって大きく変わるため、製造者は適切な範囲で少しでもカサ増しをしようとます。通常、原石の段階で最大となるガードル直径は決まってしまうため、「深さ」をより深くすることで重くするのです。

 デプスも鑑定書に書かれています。「6.51 - 6.54 * 3.97」のようにガードル直径の後にミリメートルで表記されています。この場合は3.97mmです。デプスの評価はガードル直径に対する割合をパーセント表記したもので行います。


 理想的な重さに対して、実際にはどのくらい「着ぶくれ」しているのかは、以下の計算で出すことができます。

 (実際のカラット数 - 理想カラット数)÷ 理想カラット数

3.パビリオン ~ 輝きを取るか、重さを取るか

 ダイヤモンドの下の部分にある尖ったところがパビリオンです。ガードルとパビリオンの斜面の角度がパビリオン角度でガードルから尖った先端までをパビリオン深さといいます。パビリオンの角度はダイヤモンドに入ってきた光を下に漏らすことなく反射させるためにとても重要です。

 理想的なパビリオンの角度は「40°75″」で、深さのパーセンテージは「43.1%」です。下の図では理想的なときの光の動きを青い線で表しています。ダイヤモンドの中で反射した光は上から出て行くことで輝いて見えます。

 パビリオンが浅すぎる場合は上から来た光が反射することなく下に漏れてしまい、深すぎる場合には一度反射した光が反対側のパビリオン面から外に出てしまいます。下の図では赤い線になります。このようなダイヤモンドはあまり輝かず、暗くなります。


 

4.クラウン ~ 光の量を最大に

 クラウンとはダイヤモンドを横から見たときにガードルを下面とした台形の部分です。ガードル面と斜面(ベゼルファセット)との角度がクラウン角度で、テーブルからガードル面までをクラウン高と呼びます。

 クラウンの角度はダイヤモンドから出る光の量に影響します。ダイヤモンドに入ってパビリオン部分で反射した光がスムーズに外に出てゆくための理想的な角度は「34°50″」とされています。

 下の図では、内部で1回だけ反射する光の動きを紫色の線で表し、2回反射する光を青い線で表しています。両方の光がうまく出ていけるようにクラウン角度は決められているのです。


 クラウンの高さは、クラウン角度とテーブルパーセンテージが決まれば決まります。理想的なクラウン高のガードル直径に対するパーセンテージは「16.2%」とされています。

5.ガードル ~ カサ増しをする秘密の花園

 ダイヤモンドの横から見ると、上の台形部分と下の三角形部分が合わさった形になっています。その合わさった部分がガードルです。ダイヤモンドの輝きに影響をしないため、GIAはガードルに鑑定番号を刻印しています。

 ガードルはダイヤモンドの中で一番経の大きなところですので、少しの厚みの違いが大きな重さの違いになります。厚みがあるということはムダな重さがついていることになります。

 下の写真のように分厚いガードルのダイヤモンドも売られています。このようなダイヤモンドは1カラットだったとしてもガードル部分でカサ増しをされているため、ダイヤモンドを上から見た時の大きさは理想的な1カラットよりも小さく見えます。1カラットの値段で買ったのに1カラットと思われない悲しいダイヤです。

 ガードル評価はガードル厚のガードル直径に対するパーセンテージで行います。ガードル厚のパーセンテージは全体の深さからパビリオンの深さとクラウン高を引くことで算出します。

 また、ガードル厚の評価は目視でも行います。ガードルは右の写真のように厚いところと薄いところが交互に波打った形をしていますので、薄い部分の厚みで評価します。

 薄い部分も場所によって厚みに差があるので、最も薄いところと最も厚いところを組み合わせることで評価が決まります。下のマトリックスの縦軸が最も薄いところの評価で、横軸が最も厚いところの評価となります。結論としては、なるべく薄く、なるべく均等であることが良いということになります。


6.テーブル ~ ダイヤモンドの目

 テーブルとはダイヤモンドの上面にある8角形の研磨面(ファセット)のことです。ダイヤモンドにある58個のファセットのうちで一番大きく、ダイヤモンドの輝きや美しさに最も影響する部分です。クラリティの評価でもこのテーブルに内包物や傷があるのかどうかが重要で注目されます。

 理想とされるテーブルのサイズはガードル直径に対して「53.0%」と半分程度のため、見た目の印象ではちょっと小さめです。テーブルは大きいほど光の量は大きくなりますが、大きすぎると他のパーツとのバランスが悪くなり、七色の光が少なくなります。


7.スターファセット ~ ダイヤモンドの表情

 テーブルの8つの辺にくっついている8個の三角形はスターファセットと呼ばれています。ダイヤモンド表面の模様の均整や七色の光の量に影響します。

 またスターファセットは、クラウン角を作っているベゼルファセットよりも角度が緩やかになっていてベゼルファセットから外に出られなかった角度の光を外に出す機能を備えています。

 スターファセットの評価はスターファセットの長さで決まります。テーブルとの接線からガードルまでの距離を100として、三角形の頂点がどのくらいの位置にあるのかパーセントで表記します。


8.裏側の評価 ~ エレガントな足元

 ダイヤモンドを裏返してみると、円の中心から外に向かて伸びている時計の針のような研磨面が8本あります。これがパビリオンメインファセットです。右の写真の赤く囲まれた部分です。

 パビリオンメインファセットの間には、円の周囲から中心に向かっている縦長の三角形が全部で16枚あります。これがロワーガードルファセットです。ダイヤモンドの裏面はこの2種類の研磨面があわせて32面あります。

 これらの研磨面は、ダイヤモンドを上から見た時にテーブルの真下にくる模様となり、ハートアンドキューピッドの「矢」にあたる重要な部分です。


 評価はロワーガードルファセットの長さの割合で測ります。ロワーガードルファセットが長い場合パビリオンメインファセットは細くシャープになり、短い場合は太くずんぐりしてしまいます。

 70%以上あればExcellentになりますが、パビリオンメインファセットがエレガントに見えるのはロワーガードルファセットが80%以上と言われています。

9.キュレット 

 キュレットとはダイヤモンドの裏面の尖った部分です。キュレットはダイヤモンドの輝きに影響をあたえることはほとんどありませんが、上面から見た時にテーブルの下に見えるので大きなキュレットは「格好わるい」ということになります。

 キュレットサイズの評価は、ダイヤモンドを真上から見つつ色のついたものをダイヤモンドの下側で動かしてテーブル越しにそれが見えるかどうか、という方法で行います。